Language

Project

2025.02

レジデンス No.4

シェフ・イン・レジデンス第4弾では、東京・六本木のインド料理レストラン「Nirvana New York」(ニルヴァーナ・ニューヨーク)でシェフを務め、インド料理の枠を超えたモダンインディアンと日本の食文化を融合させながら、アーユルヴェーダ(生命科学)や薬膳などの考え方を取り入れた独自のスタイルを貫く引地翔悟氏に、6日間佐賀に滞在していただきました。

実は、このレジデンスの3か月前、サガマリアージュツアーに参加されていた引地シェフ。
佐賀県内を回って食材や器の生産地を訪問するうちに、佐賀の土地でより深く食と向き合ってみたいという想いが生まれ、今回のレジデンスに繋がりました。

滞在中、小城市の「はしま海苔」さんを訪問した日は、船に乗って有明海へ。潮が引いたときだけに出現する「牡蠣礁」に上陸することができました。放っておくと積み重なる牡蠣が潮の流れを変えたり、海苔養殖の妨げになったりするという牡蠣礁。一方で、牡蠣礁になる牡蠣の一種で、有明海のみに生息する「スミノエガキ」は、真牡蠣の2倍ほどの大きさと強い甘味を持つと言われています。
まだまだ市場に出回ることが少ないスミノエガキのことを、もっと多くの料理人の方にも知ってもらいたいと言う代表の橋間さんの話を聞き、「こんなに美味しい牡蠣を活用しないのはもったいない」と引地シェフの関心も高まっていきました。そして、「殻を取り、火入れして出荷ができれば、レストランでも取り扱いしやすくなるのではないか」という引地シェフの意見は、橋間さんにとっても今後の流通を考える上で良いヒントになったようです。

また、もともと色彩や香りへの関心が強く、学生時代は認知心理学を学んでいたという引地シェフ。嬉野茶の原点である「古式釜炒り茶」を継承し、自然の営みをお茶に映しながら自然と人がつながるお茶を作る「あはひの」の松尾さんを訪れた際には、お茶そのものの香りや味わいに感動すると同時に、松尾さんのお茶や自然に対する分析や考えに深く共感し、新しい気づきも多く得られたようでした。

そして、引地シェフからの提案により開催された最終日前夜のシェフズテーブルでは、滞在中に訪問した生産者の皆さんを招待し、それぞれの食材を使った5品の料理が披露されました。
佐賀の食材を感じたままに、スパイスと組み合わせる引地シェフの料理に、興味津々の皆さん。
また引地シェフの料理を中心に、普段は関わることがない県内の生産者同士がお互いに顔を合わせ、それぞれの取組や考えを共有し合う貴重な時間にもなっていたようです。

今回の滞在で生まれた引地シェフと佐賀との深い繋がり。この繋がりがどのように広がっていくのか、今後の展開がとても楽しみです。

滞在期間

2025年2月10日(月)~16日(日)

滞在拠点

和多屋別荘
(佐賀県嬉野市大字下宿乙738)

参加者

引地翔悟(Nirvana New York シェフ / 東京)

取組内容

・県内の意欲ある生産者や窯元等を個別に訪問(産地ツアー)
・佐賀の香りや色彩に触れるフィールドワーク(有明海、有田焼産地など)
・滞在拠点の和多屋別荘内にあるラボキッチンを活用し、県内生産者との交流によって出会った食材を使ったメニュー試作

出演者

引地 翔悟

引地 翔悟

Nirvana New York シェフ

1991年、東京都出身。父が鹿児島出身で幼少期は九州で過ごす。学生時代は認知心理学を専攻し、色彩と香りをテーマに研究。大学在学中にイタリア料理店で働いたことをきっかけに料理の道へ。卒業後、本格的に料理人としてのキャリアをスタートし、フレンチや熟成肉の技術を習得。東京駅「anclar」で料理長を務めた後、「Nirvana New York」(東京・六本木)に移り、モダンインディアンの技法を取り入れた独自のスタイルを確立。1年後にシェフに就任。「香り」「色彩」「素材の力」に着目し、日本の食文化とモダンインディアンの融合を追求。アーユルヴェーダや薬膳の考え方を取り入れ、「食べることで健康になる料理」をコンセプトとしている。

PROJECT

STORY

佐賀の豊かな自然と対話しながらこだわりの食材を生み出す生産者たち

400年以上続く伝統と技術を受け継ぎながら器づくりに向き合う作り手たち

料理人

佐賀の「食」と「器」の価値を引き出すことのできる気鋭の県内料理人たち